高橋 龍三郎
研究活動計画の概要
過去3か年の研究成果を踏まえ以下の事項について検討、実施する。
- 縄文中期の集落、墓制の考古学的分析から双分制構造を立証する。
- 縄文中期の親族構造(双系制)、婚姻形態(集落内婚)について分析する。
- 動物表徴から縄文中期の集団的シンボリズムを解明する。(協力者へ依頼)
- 動物表徴から縄文後期の集団的シンボリズムを解明する。(協力者へ依頼)
- 中期集落の双分制構造から後期分散的集落への変遷過程を明らかにする。
- 縄文後期の親族構造(単系出自)、婚姻形態(外婚制)について解明する。
- 房総後期の氏族制社会の成立要因を解明する。
- 地域における晩期前半期の地域化について土器型式から解明する。
- ゲノムデータとの照合を経て、中期集団の地域構成と婚姻形態を解明する。
- ゲノムデータから中期集落の集団構成を解明する。
- ゲノムデータから後期集落の集団構成を解明する。
- ゲノムデータから中期から後期への婚姻形態の変化を解明する。
- 考古学的検討から大型住居の出現要因と社会的機能について検討する。(協力者へ依頼)
- 後期における儀礼・祭祀の実態について検討する。(協力者へ依頼)
- 社会の複雑化を推進した要因について、物質文化および理論的側面から検討する。
- 上記の解明を通じて、氏族制社会の出現に関する仮説を提示する。
- これらの考古学データの解析結果をゲノム解析の結論と統合し、中期から後期社会への変容について具体的なモデルを構築する。
- これらの成果について分科会、シンポジウムを開催する。
予想される研究成果
上記の細目について逐一分析検討を経ることにより、縄文中期終末から後期前半に集落構造にどのような変革が起きたのか、またその変革の方向性を明らかにすることができる。特に中期後半期集落が形態的に環状形態をとるものの、実態は内部を2つに分けて双分組織を構成し内婚を通じて集落を維持したこと、またその出自体系が双系制出自であることを立証する。それが後期を迎えると分散型集落に変容する過程を、社会の分節化に伴う単系出自への変化、外婚制への変革した軌跡を明確に描き出すことができる。この間の婚姻などを通じた交流の実態は古病理学、ゲノムに痕跡を残していると予想されるので、具体的は集団間の交流を千葉県市原市周辺の遺跡、人骨群を中心に描き出す。
著作・論文・講演会・学会発表の予定 上記の細目課題について論文を個々にまとめる。また総合的なシンポジウムを開催する。
太田 博樹
研究活動計画の概要
- 西広7-2、祇園原3−3、菊間手永52-2それぞれについて、DNAの再抽出をおこない、より多くのライブラリー(3~10)を作製し、これをNovaSeqにかける。
- 未処理の菊間手永(28検体)からのDNA抽出を行う。
- 3つの遺跡からの上記3検体以外の6検体(西広7-7、西広7-12、祇園原3-9、祇園原4-S002、菊間手永2、菊間手永69)のNovaSeqラン(2019年度先進ゲノム支援)の出力データのin silico解析を進める。
- 3つの遺跡からの9検体のNovaSeqラン出力データからミトコンドリア・ゲノム(mtDNA)データを抽出し、微量元素同位体解析の結果と合わせた集団ゲノム解析を行う。
予想される研究成果
- これら3検体について > 30x カヴァレッジのゲノム配列が得られる。
- 菊間手永の分析検体数が集団ゲノム解析ができる数になる。
- 3つの遺跡について複数のドラフト全ゲノム配列が得られる。
- 3つの遺跡間での母系の遺伝子流動に関する初期データが得られる。
著作・論文・講演会・学会発表の予定
未定
米田 穣
研究活動計画の概要
- 草刈貝塚の人骨について年代測定を実施する。祇園原貝塚と草刈貝塚について、墓域形成に関する考古学的な解釈のための、研究代表者ならびに研究協力者と協働して、データ解析を実施する。
- 製品や動物埋葬などの人間活動とイヌ、イノシシの食生態との関係を研究代表者とともに検討する。
- 歯エナメル質におけるSr同位体比の測定を動物骨を対象に予備的に実施する。
予想される研究成果
- 多数集骨墓にふくまれる人骨の時間幅や、埋葬小群の同時代性についての検討を行い、時間情報を加味したうえでの社会像を検討できる。
- 縄文時代における動物と社会の関わりについて、イノシシの肥育などの可能性をふくめて検討する。
- Sr同位体比によって外部からイノシシが持ち込まれた可能性について検討する。
著作・論文・講演会・学会発表の予定
- 研究代表者が主催する国際シンポジウムにおいて、研究成果を発表する。
- 先史時代のイノシシ類の管理について論文を投稿する。
藤田 尚
研究活動計画の概要
本年度は、千葉県出土の縄文人骨について、その遺伝性疾患の発現(形態的異常)を中心に調査を進める。重点的な観察項目としては、特徴的顔貌(逆三角形の顔、大頭症、小頭症、短頭症)、骨格系の異常(主として異常な発達障害および成長遅滞、小肢症、第5指短小又は乏指症、第2趾と第3趾の合趾、口唇口蓋裂)を中心に精査していく。そのような先天性疾患個体に遭遇することができれば、世界的にも非常に貴重な資料となる。そのような個体のゲノムや食性を研究班で解析することができれば、世界的にも貴重な研究となりうる。並行して、古健康学的な観点から、各種のストレスマーカーや古人口学的検討により、集団間差を検討していく。
予想される研究成果
これまで、縄文時代人骨形態のメトリック・ノンメトリック研究はなされてきた。しかし、古病理学的視点を加味した研究はほとんどなく、大頭症、小頭症などの鑑別が期待される。頭蓋骨縫合早期癒合症は、FGFR遺伝子変異によることが判明している。また、アペール症候群やクルーゾン病によっても引き起こされることから、このような個体をゲノム解析することへと発展させ得る可能性を持つ。また、古健康科学的な成果として、疾病の頻度、Traumaの頻度やその部位、ストレスマーカーの差異などから、帰納的あるいは演繹的にある集団の特徴を解明し、集団間差の有無とその意味を解明していくことが期待される。
著作・論文・講演会・学会発表の予定
未定